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2010年8月 2日 (月)

電子書籍時代のブックデザイン 56―誰にだって作れる! InDesignによるPDF電子書籍の簡単な作り方

本当はワードでもテキストエディタでもいいんだけど、Marginalreviewを見てくれている人の多くがデザイナーであろうことを想定して、InDesign(CS3以上)によるPDF電子書籍の作り方を簡単に説明する。(私は電子書籍という言い方が嫌いなのだが、ここでは現状の慣例に従うことにする)

その前に何故PDFかということなんだけど、それは「デザインが崩れない」からであるのと、「簡単」だからだ。InDesignでは電子書籍の標準フォーマットと何故か思われている「ePub書き出し」もできるけれど、これはデザインが崩れるから使わない。(ePubは欧文組版には向いているが、日本語組版を再現しようと思えば複雑な構造になってしまう)

私の考える電子書籍の定義は、「パソコンやIPad、iPhoneなどのスマートフォンで読める(観れる)電子本」のこと。そしてその電子書籍はどんなデバイスであっても同じに見えること。その電子書籍を読むために必要なソフトはPDFが読み込めるソフトなら何でもかまわないこと。以上である。(デバイスごとにフォーマットや作りを変えるなんて無駄、ナンセンス。価格を上げるための方便だ)

電子書籍の機能は必要ないと考えている(いろいろ試してみて、体験的にそう感じる)。電子書籍はデバイスごに、あるいは電子ブックリーダーソフトごとにさまざまな機能が付加されるようになっているので、「余計なことはしない方がいい」と考えているからである。(ベージめくりのギミックも、栞の追加もリーダーアプリケーション側で用意されているから必要ない)

「誰でもできることであれば商売にならない」と、ネット上の電子書籍評論家(?)が書いている記事を読んだが、これは印刷業界、出版業界の本音だろう。今、業界は「なんとか研究会」やら「なんとか協会」なるものをあちこちで立ち上げては「誰にでもできるものではない」ように見せかけるための努力をしているらしい。ご苦労なことだ。

まあ、そんな話は読者や個人出版を目指すものにはどうだっていい話。私たちは簡単な方法で、気に入った電子本をどんどん発信していけばいい。

無駄口はこれくらいにして、「超簡単、InDesignによるPDF電子書籍の作り方」を説明する。PDFは、そのままでもほとんどの電子ブックリーダーで読める(電子書籍騒動の原因のひとつ、iBooksでも読み込めるが見開きにまだ対応していない)。つまりInDesignで作られたレイアウトを普通にPDF書き出しさえすれば、それは即ち電子書籍なのだが、それでは話が終わってしまうので、もう少し電子本らしく見えるためのテクニックを紹介する。

1)PDFを表示するだけのアプリケーションの場合は1ページ単位でしか表示しない。見開きで書き出したものは見開きを1ページとして、そのまま一度に2ページずつ表示されてしまう。これは《i Bunko HD》などの見開き表示が可能なアプリケーションでも同じで、ソフトは1ページ単位で認識するようにできている。なので、見開きで制作したレイアウトも出力の際は1ページ単位で出力するようにしなければならない。そうすることで見開き表示可能なソフトでは、勝手に2ページをひと見開きとして表示するようになっている。
ノンブルが始まる位置は勝手に決めないほうがいい。リーダーアプリケーションはどれも表紙を1ページ目として認識するようにできている。目次を作る時はそれを頭に入れておく必要がある。

2)ここではiPadでの表示を基準にしているのだが、iPadでは縦にした時と横にした時では表示の仕方が変わる。1ページずつしか表示できないソフトの場合は、縦にして横にしても大きさが変わるだけで同じだか、見開きが可能なソフトでは、縦の時は1ページごと、横の時は見開きで表示されるようになっているから、見開きを正しく表示させるために、表紙の後に余分のページを1ページ追加して、ページがズレないようにしておく必要がある。

3)PDFはePubのように自動で文字サイズが変わったりはしない。そのため「文字の見やすい大きさ」をあらかじめ設定しておく必要がある。詳細は以前の記事に書いているが、基本は24Qくらいだろうと思われる。

4)判型はどんな形だってかまわないのだけれど、無駄な余白を少なくするためにはデバイス(iPad)などの画面のサイズに合わせておく方がいいと思う。このあたりの寸法も以前の記事に書いているのでそれを参考にして欲しい。

5)機能は必要ないと書いたが、InDesignのPDF書き出しには「インタラクティブPDF」というのがあって、それを使えば目次のハイパーリンクなどが埋め込めるようになっている。但し、その機能が再現できるアプリケーションは今のところ《PDF HD》しかない。だが、とりあえずでもハイパーリンクを埋め込んでおけば、現状では機能しなくても、今後対応するソフトは出てくるはずで無駄にはならないと思われる。

以上だ。なんだか素っ気ないが、電子書籍はこれで十分なのだ。本は作ることに意味があるんじゃない。読んでもらうことに努力を傾けるべきだろう。

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